中小企業が金融機関から融資を受ける場合、経営者個人や家族のほか、知人などの「第三者」が債務者と同じ立場で返済責任を負う連帯保証人になるよう求められることがあります。
この保証の方式は、
〈1〉借り入れの日時や金額を定め、返済義務の範囲を限定する「普通保証」(特定債務保証)
〈2〉企業と金融機関の継続的な取引から生じる不特定の債務を一定の範囲内で保証する「限定根保証」
〈3〉保証金額の上限や期限を設定しない「包括根保証」の3つに分けられます。このうち包括根保証は、保証金額や保証期限に定めがないことにより保証人が過大な責任を負う可能性のあることや、経営者の新たな事業展開や再起を阻害するするとの指摘がなされていました。このため包括根保証を禁止する内容の民法改正が平成16年11月に成立し、今年4月1日から施行されます。
この民法改正の背景として
①保証金額に制限がないため、保証人が契約時に想定していなかったような金額の代位弁済を求められることがある。
②保証期間に定めがないため、保証人が契約したこと自体を忘れかけた頃に行なわれた融資についてまで、突然代位弁済を求められる場合がある、等が挙げられています。
改正の主な改正点
様式行為化
値保証契約は書面で行わなければならない。口頭での契約は無効。
保証の極度額の定め
根保証契約は、書面上、保証の限度額(主債務の元本、利息及び損害賠償のすべてを含む)を定めなければ効力を生じない。保証人はその範囲内で保証。
保証期限(元本確定期日)の定め
契約において元本確定期日を定める場合は、契約日から5年以内。契約において元本確定期日を定めない場合は契約締結から3年を経過した時点で保証する主債務の元本が確定する。
元本確定事由
以下の事由が発生した場合には、保証人の保証債務が確定する。
(1) 債務者や保証人が強制執行を受けた場合。
(2) 債務者や保証人に対する破産手続開始の決定があった場合。
(3) 債務者や保証人が死亡した場合。
金融業界では、個人保証や不動産担保に依存しない中小企業融資が増加しています。
包括根保証の見直しは、金融機関が企業自身の返済能力や事業の収益力を重視した貸し出し姿勢へ転換するよう促す効果も期待できます。
中小企業診断士 千葉 清二(ちば せいじ)