9月の定例会は、当NPO法人の才上隆司理事のアレンジで、長野県渋温泉 春蘭の宿 さかえやhttps://e-sakaeya.jp/ の代表取締役社長 湯本晴彦様に、「コロナ禍の人を活かす経営」という題名でご講演いただきました。倒産寸前の宿から、コンサルタントとの出会い、人材教育で経営を立て直し、コロナ禍でも黒字の高級宿に導かれたお話でした。

また、自立支援事業として、就労支援、高卒卒業資格がとれるフリースクールも行われているとのことでした。

湯本社長は、外資系のコンサルティング会社に勤務されたのち、実家のさかえやを継ぐため27歳で実家に戻ったそうです。社長をついだあとも失敗ばかりで何度も倒産しかけたそうです。数々の困難を乗り越えて、社長が師匠と仰ぐ経営コンサルタントの指導で、素手でトイレ掃除をしたり、1日1枚お世話になった方にはがきを書いたり、不登校・引きこもりの支援でフリースクールの開校したり、活動に取り組んだそうです。

2015年2月には旅館甲子園に出場し、みごと優勝。日本一になった旅館ということでお客様が殺到しましたが、旅館としてはなにも変わっていなかったので、顧客からの酷評があったそうです。「このままでよいのか」、「旅行甲子園の実行委員にも申し訳ない。」ということで、自問自答し、2017年2月に再び次の旅館甲子園に出場し、みごと旅館甲子園連覇したそうです。

◆           旅館甲子園で「さかえや」が2連覇

旅館甲子園を通じてわかったこととして、「社員教育の前に人間関係であること」、「人間関係は一緒に何かやり切ったり、共有することで深まっていくこと」、「勝つために一生懸命やったのではなく、一生懸命やったから勝てたこと」、「どこかでいい人がいたらいいなあと思うのではなく、いまここにいるメンバーで良くなること」だったそうです。

旅館甲子園の他にも、新・ダイバーシティ経営企業に選ばれたり、Relux2020 全国2位にランクインされたそうです。大手サイトでの評価も非常によくなり、事業がうまく回りだして、資金繰りもよくなったところで、新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、2020年4月から2か月完全休業。売上ゼロ、売掛金ゼロになったそうです。その中でも

「社員はクビにしない!」「給料は全額払う!」という信念のもと活動したそうです。

苦しい状態だったそうですが、それまでにも何度も何度も倒産寸前を経験していて、「そういえばずっとコロナと同じようなものだった。しかも前の方が大変だった。」ということに気づいたそうです。そして、逆転の発想で、ピンチはチャンス、休業期間で設備投資し、半露天風呂付セミスイートルームをオープンしたそうです。

コロナ禍でも全員経営で、スタッフが旅館以外の11社12事業に進んで出稼ぎに行ってくれたそうです。スタッフはただ働きに行っただけはなく、さかえや様のパンフレット配って宣伝をしたり、一生懸命働いたことで行った先でもかわいがられたそうです。それだけではなく、出稼ぎに行った先で身に着けた技術で、メンテナンス・消毒事業などの新しい事業も立ち上げられたそうです。

GOTOトラベルキャンペーンの東京解禁の日に、NHKテレビの「首都圏情報ネタドリ!」でとりあげられ、三か月毎日満館、社長ご自身も仲居をやるなどみんなで乗り越え、コロナ禍でまさかの過去最高益をだしたそうです。

社長は、「不況は来るが対処法がある。厳しかった分、戻った時に取り戻せるようにすること」が重要であるとのことでした。

次に、人を活かす経営についてお話いただきました。

スタッフの力をあわせるには、「言いにくいことも言うこと」、「納得するようにいうこと」、「人間関係ができたうえでいうこと」 、「特に陰で頑張っているスタッフをみること」が重要だそうです。物事へのこだわりが強く、人に合わせる従順さが強い人が真の社会人と考えているとのことでした。

協力してもらうためには、「ゴールを明確にし、出番を作ること」、「認め合うこと、承認する文化を作ること」、「仲間と仲良くなれるような活動をいれること」、「そもそも協力しやすい人を雇うこと」が重要だそうです。

今後ジョブ型雇用が増えますが、それは聞こえのよい派遣社員であると考えてられているそうです。我々中小企業診断士に対しては、「昨今ジョブ型の雇用が増えているが、クライアント企業に対して中小企業こそメンバーシップ型の採用をやってほしい」というメッセージで締めくくられました。

今回のご講演にあったお話は「人生が変わった!師匠の教え」という題名で出版されており。さかえや様のEストアから購入できます。