2025年9月の定例会では、当NPO小犬丸理事のコーディネートのもと、細井智彦様(細井智彦事務所代表、元リクルートキャリア)を講師に迎え、「中小企業に向けた人材採用〜定着支援のポイント」と題した講演会を開催しました。

細井先生は、株式会社インディードリクルートパートナーズでの人材紹介事業の経験を活かし、現在はフリーランスとして中小企業の採用支援に取り組まれています。東京都の中小企業人材確保総合サポート事業におけるコンサルティングフレームワークの設計や、業界別人材確保強化事業でのセミナー登壇、東京商工会議所での採用・定着に関するセミナー、さらには江戸川支部発行の「採用・面接力強化ガイドブック」の監修など、実績は多岐にわたります。現在は『労働新聞』にて採用ノウハウの連載も担当されており、著書『使える人材を見抜く採用面接』(高橋書店)などを通じて、採用現場における実践的な知見を広く発信されています。

講演ではまず、中小企業が採用に苦戦する背景として、採用活動が組織的に機能していないことや、管理職・現場メンバー間での認識の共有不足、自社の魅力や課題を客観的に捉えられていないことが挙げられました。ターゲット設定の誤り、募集方法の不適切さ、面接の質の低さ、従業員満足度の低さ、採用業務の軽視など、採用がうまくいかない原因は多岐にわたると指摘されました。
そのうえで、採用成功のためには、母集団の確保を強化すること、求人票の内容を見直すこと、面接体制を再設計すること、そして入社後のフォローを充実させることが重要であると述べられました。採用手法も多様化しており、合同面接会や民間紹介会社の活用、リファラル採用、ダイレクトリクルーティング、SNSの活用など、企業の状況に応じた柔軟な手法の選択が求められます。
求人票については、求職者の不安を軽減し、応募の背中を押す情報を提供することが重要であり、仕事内容の具体的な説明(5W1H)、職場環境、評価制度、労働条件などを詳細に記載することが求められます。一般的な人物像の押し付けではなく、仕事軸での要件設定や魅力の言語化、検索されやすいキーワードの盛り込みなども効果的であるとされました。
面接については、従来の「選抜の場」から「対話の場」へと進化させる必要があるとし、候補者の可能性を引き出し、動機づける1on1ミーティングとして捉えることが重要であると語られました。面接官には、丁寧な傾聴、具体的な質問、肯定的な態度、誠実な説明、相談や示唆、宿題の提示、夢やWILLの共有など、多様なアクションが求められます。

また、早期離職を防ぐためには、採用段階から配属部門のマネジャーやメンバーを巻き込み、求める人物像や職場の魅力を共有し、面接への同席や仕事内容の誠実な説明を行うことが効果的であるとされました。経営者と現場のすり合わせを行い、当事者意識を持たせることが、定着率の向上につながるとのことです。
講演の最後には、応募数を確保するためにはターゲットの見直し、メッセージの再設計、伝え方の工夫が必要であり、求人票は求職者の不安を減らし応募喚起につながる情報を充実させること、面接は候補者との接点を発掘・共有する場として進化させることが重要であるとまとめられました。ネガティブな要素も、伝え方次第で魅力に変換できるという視点は、多くの会員にとって新鮮で実践的な気づきとなりました。

今回の講演は、採用活動に悩む中小企業にとって、理論だけでなく現場で活かせる具体的なヒントが満載で、会員からも「すぐに実践に移したい」といった声が多数寄せられました。
講演会後細井先生を囲み、懇親を深めました。
