7月の定例会は「コロナ後、2極化する出版業界」という題名で、株式会社ユサブル代表取締役 松本卓也様にご登壇いただきました。今回は、当NPOの兼子俊江理事の手配でご登壇いただきました。松本様による当NPO定例会でのご登壇は2度目です。

ご講演内容は以下の通りでした。

・コロナの影響により、流通の効率化が進みました。大手出版社の全国の書店に本を置ける営業力という強みが弱まりました。本部一括取り扱いの拡大により、規模の小さい出版社でも企画で勝負できるようになり、人件費をかけずに全国の書店に本がおけるようになりつつあります。
・出版の現場では、リモート化、オンライン化が進み、コストの削減や距離の壁が低くなりましたが、企画力や取材力の低下が懸念されています。
・雑誌の発行部数が激減したため、宣伝媒体としての地位が低下しました。宣伝の中心がSNSなどの口コミ主体になり、宣伝力における大手と中小の壁がなくなってきています。
・ネット通販の伸びにより、販売におけるリアル書店の重要度が相対的に低下しました。中小出版社でも全国どこでも本を届けられるようになり、大手と小出版の差が縮まりました。
・電子書籍の売上は伸びているものの書籍、雑誌、コミックで濃淡があり、電子コミックが爆発的に伸びています。その中で世界一位の不動の地位だった日本コミックが韓国や中国発のコミックに脅かされています。
・コロナを得て出版業界は、世界レベルまで延びていく大出版社とゲリラ的な小出版社に二極化されていく可能性が高いです。

最後に、「出版は本来スモールビジネスであり、出版社の小規模化はある意味本来の姿に戻りつつあるのかもしれない。一方で、日本が遅れをとっているコンテンツビジネスの世界で、大出版社にはディズニー並みの企業を目指してもらいたい・」という言葉で締めくくられました。
我々があまり知らない出版業界の裏側を知ることができて大変ためになるご講演でした。